戦後体制を作って壊した政・官・財とは
(新潮社、2016年11月)
ぼくにはこれ以上はないという刺激的な惹句が帯に躍っていた。<バブル最深部を取材した「伝説の記者」が初めて明かす「バブル正史」>
バブル期「1980-1899」の後半、ぼくは名古屋経済部記者だった。1987年10月のブラックマンデーの時も、1989年大納会に日経平均が史上最高値3万8915円をつけた時も、名古屋の証券担当記者だった。特金とかファントラは取材もし記事にもしていたので、なつかしさも感じたほどだ。
その感覚でこの本を読み進むと、属する新聞社の違いだけではなく、記者としての蓄積の厚み、気構えの差では足元にも及ばず呆然となる。
それはさておき、筆者の文章は極めてぼくには読みやすい。慣れ親しんだ新聞記事の世界にあるためだろう。題材も視点も日経新聞的だ。
しかし書かれてある中身は当然だが、新聞記事よりうんと深く踏み込んでいる。巻末の参考図書を読み込んだうえで、そこに書かれてないことや個人的な取材結果を取り込んで組み立てているのだろう。逆に筆者が常識として知っていて、あえて書いていない部分もあるのではないか。
あのバブル崩壊は、政財官の連携で作り上げた日本戦後システムの崩壊であり、崩壊は避けられたのに崩壊させてしまったのもその政財官だったとの見方を示している。いまの安倍―黒田ラインによる異次元緩和は「人工的なバブル発生」だと危惧し警告を発している。おおむね同意できるが、より踏み込んだ論評をできる力が、いまのぼくにはありそうもない。
「あとがき」の素直な書きぶりに好感を抱いた。特に当時の日経連会長だった父上についての言及は驚きであり、へえーっそうだったんだと、妙にいろんなことを納得した。