5 映画 銀幕に酔う

邦画『月はどっちに出ている』

意味深な題名 立ち位置の不安定さ?

(崔洋一監督、1993年公開)

 愛知がんセンターに入院中、アトリウムにあるDVDギャラリーに並んでいたので借りて観た。崔洋一という監督名と、フィリピン人女優ルビー・モレノの名前は記憶にあったが、劇場では観てはいない。新聞で読んだ映画評が好意的で、気になっていたのを思い出したのだった。

 在日の若者たちの生きにくさと、けなげな出稼ぎフィリピン人女性の生き生きとした様子が同居している。

 岸谷五朗がいい。遠藤憲一もいける。おそらくは潤沢ではない制作費の中で、なんとか生きのいい映画を撮ろうという思いが伝わってくる。

 タイトルもなかなかに意味深長だ。道に迷ったドライバーが、会社に電話して「私はいまどこにいるのでしょうか」と尋ねたとき、支配人が発した問いがそのまま題名になっている。

 在日の人や海外からの出稼ぎの人たちの立ち位置が日本で不安定なことを象徴している、ととるのが普通だろうけど、自信はない。崔監督の想いは別にあるのかもしれない。

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