有名なのに背景はよく知らなかった
(マイケル・カーティス監督、製作1942年、日本公開1946年)
愛知がんセンターに入院中の名作見直しシリーズ第3弾である。有名すぎるほど知られた映画なのに、ぼくは肝心な点を知らずにいたことがわかり、恥ずかしくなった。たとえば―
- 製作は1942年、第二次世界大戦のさなかであった。連合軍がナチスと欧州でドンパチやってるその最中に、米国ハリウッドで撮られている。
- 映画の舞台カサブランカはもともとフランスの植民地だが、当時のフランスはナチスに占領されていたので親ナチ政権下にあった。だけどフランス国民には、ナチスに反感を抱く人がたくさんいた。
- この映画の製作には、米国民に向けての戦意高揚という側面があった。実際に1944年6月6日にはノルマンディー上陸作戦が実行に移された。
そう思うと、主人公のリック(ハンフリーボガード)が、現地警察や独将軍、レジスタンス闘士と話す言葉の端々に、欧州の英仏を助けに米国がもうすぐやってくるぞというメッセージを感じる。
この映画を当時の米国人が観ると、有名なラストシーンで、独将軍を殺し、レジスタンス闘士を逃し、元恋人もついていかせるというリックの「決断」は、そのメッセージになるのだろう。
付録のドキュメンタリーにはもっと驚いた。ラストシーンをどうするか実際はなかなか決まらず、ボガードは撮り直しか追加撮影のため再度、ハリウッドに呼ばれた、とあった。
ハリウッド映画に政治性が色濃いのは伝統なのだとも知った。ノルマンディー上陸へと向かう米国世論の流れをくみ取ったものだったのだろう。