主人公は1951年生まれ ぼくの物語でもある
(毎日新聞出版、2017年11月)
主人公は1951年生まれの65歳。これって浅田次郎とまったく同じではないか。そしてぼくはそのひとつ下だから、これはぼくの物語にもなりうる。
商社マンだった男は定年退職の日に地下鉄の中で倒れ、集中治療室に運び込まれる。妻や子ども、会社の同期でありいまの社長、養護施設で生まれ育った親友などが、主人公との関係を独白調に回想していく―。
あの名作『地下鉄に乗って』『鉄道員』のように、現実と霊の世界とが交錯しながら、浅田ワールドが名手の手によってかたちづくられていく。
途中からよくわからない人物がときどき出てくる。妙齢の美人だ。あちこちへ主人公を連れまわしてくれる。それがだれかは終わり近くに判明し、うっとりできる仕掛けになっていた。さすが浅田次郎である。
このごろ書籍広告で筆者の写真を見ると、スマホの写真に写っているぼくと、髪の毛も含めた顔の印象が似てきている気がしてならない。同世代とはいえ、うれしいような恥ずかしいような不思議な感じだ。ぼくが筆者の本をたくさん読みすぎたせいだろうか。本棚だけで30冊を超えている。でももっともっと書き続けてほしいし、もっと読みたい。