「定年」をどう描く 浅田調は期待に届かず
(幻冬舎、2009年11月)
久しぶりの浅田調を楽しんだ。楽しんだけれど、期待が過大すぎたのか、手ごたえは期待の半分もなかった。
かつての財務省役人と自衛隊員が天下り団体の閑職に就く。思いつきで始めた「期限切れ債権の回収」が予想よりうまく進み、元銀行OLと三人で億単位のカネをせしめようという話。最後は古手のマッカーサー時代のおばあさんにさらわれてしまうのだが。
ぼくは浅田次郎が「定年」とか「天下り」をどう書くかに関心があり、筆の運びや表現、人物描写が売りになるはずだった。
自衛隊は筆者もかつていた組織であり、そこの出身者はほかの小説でも書き慣れていて、それなりにおさまっている。しかし財務省OBは現実の官庁にはいそうもないタイプで、その人物造形には最後までなじめなかった。