事件の周辺にさまざまな人生模様
(講談社文庫、初刊は2002年9月)
先に映画を観てしまった。しかしこの原作のプロットをめぐる直木賞選考でのゴタゴタも頭に残っていて、原作も読みたかった。
そして意外だった。問題の骨髄移植の話がもっと早く出てくると思っていたけれど、最後の最後だった。それも多くの読者が納得するような出方ではないだろう。ぼくは、えっこれで終わり? と感じてしまった。
しかし、梶以外の人物がどんどん入れ替わって一人称になって進んでいく構成は新鮮だ。筆者の狙いは、事件の周辺にいる人物たちのさまざまな人生模様を描くことにあるのだろう。刑事、検事、裁判官、看守、記者たちからの視点のとらえ方がスリリングで面白い。
不満はいろいろあるけれど、読みごたえもたっぷりとあった。