老舗の重みと伝統 違い味わう愉しみ
(軽井沢、日光、箱根)
5月連休明けの平日、軽井沢の万平、日光の金谷、箱根の富士屋の老舗クラシックホテルに3連泊した。旅行会社のバスツアーに妻と参加した。
60代前半のシニア夫婦にとっては何度も耳にしたことがある著名ホテルの組み合わせ。ふたりとも幼少時は日本海側で生まれ育ち、青春時代からはずっと名古屋暮らしである。それぞれのホテルがある有名観光地も実は、訪ねたことがなかった。
ホテルでは泊まるだけでなく、由緒ある館内レストランで夕食と朝食を味わった。地元観光の時間もあった。初めて訪ねた観光地と、そこを代表する老舗ホテルには当然ながら、大きな違いがあった。3連泊なので、その違いを味わうのもとても面白かった。
■軽井沢と万平ホテル
軽井沢の一帯は、なんといっても空気の透明度が違う、と感じた。別荘や店舗、教会、ホテルなど建築群の水準が高く、蓄積もたっぷりとある。「効率よりも余裕」の世界だ。
万平ホテルは、江戸末期に中仙道沿いに開かれた宿が原点。洋風の建物とフランスレストラン、カフェは健在である。何よりロケーションがいい。
旧軽井沢銀座の奥にひっそりとたたずみ、避暑地の高級ホテルの雰囲気を崩していない。ロビーやレストランも格式と歴史を感じさせてくれた。
■日光と金谷ホテル
日光の最大名所、東照宮は思っていたよりもスケールは小さく、狭かった。陽明門も改修中で全体は見られなかったが、想像よりうんと小さい。細部の彫刻が微細にわたって手が入っているので、写真では大きく感じていたのかもしれない。
金谷ホテルは、ほかの2つのホテルを比べると、やや時代遅れな感じがした。日光は徳川家康を神として幕府が作った官製の神社である。民の支援の薄いことが少しずつホテルの評価にもつながっていないか。「重要文化財」の指定を持て余しているような気もした。
■箱根と富士屋ホテル
箱根一帯は、急坂とカーブと谷、湖、火山の跡、旧東海道、温泉、ゴルフコース、駅伝…。話題になる要素が多く、四季を通じて楽しめる。東京の奥座敷として、ニーズはこれからも続くのだろう。
富士屋ホテルは、3つのホテルの中ではもっともアクティブで将来も明るく見えた。設立に関わった金谷ホテルの二男、正蔵氏の功績が大きいのだろう。造りや配置は、兄が継いだ金谷とよく似ている。最初の和風の別館、そして東京五輪時の新館へ。金谷よりもお金がかかっていて、作り込みも深い。40年代にオーナー経営から会社経営に変えたことも大きい気がする。サービスもベストだった。
■ (付録) 今回のバスツアーについて
全行程を貸し切りバスで運んでくれて、発着は自宅にも近い地下鉄駅前だった。一緒に参加したのは約15組。同年代のご夫婦か女性2人組だった。
団体旅行はめったに参加しないのだが、集団行動は極力省かれていて、日程もゆったり。ホテルにも夕方早めに着き、目的の老舗ホテルの雰囲気をしっかりと楽しむことができた。
平日利用の3泊4日、すべての食事代も含んでひとり11万円だった。ホテルのブランド感やレストランでの食事の質も考えると、ぼくら名古屋人が大好きな「お値打ち旅」だったと思う。