13年ぶりの懐かしさ 百舌の切れ味は…
(集英社文庫、初刊は2015年11月)
百舌シリーズ、13年ぶりの新作である。
倉木や大杉というなつかしい名前が、初期のシリーズに熱中したころの遠い記憶と、最近みたテレビドラマとがかぶって甦ってきた。正体不明の百舌が、一人称で出てくるのも前作と同じである。
しかし何かが決定的に足りない気がする。いや大事なものが欠けている。
まず黒木警視という女性キャリアにきらめきや魅力が感じられない。大杉も似た水準だ。
さらに何より、文章や構成や流れに、緊張感や切れがない気がする。サスペンスもとぼしい。しゃべり言葉でのやりとりが多すぎる。それが物語を間延びさせていないか。
13年ぶりに沈黙を破っての登場、という帯の文句に期待して読んだけれど、残念だ。かつて読んだ時の鮮烈な印象が強すぎるのだろうか。