姉妹の日常 流れる心 移ろいの物語
(是枝裕和監督、公開2015年6月)
是枝監督の作品はこれまでに3作品を観た。今作も派手な事件や展開はない。鎌倉の民家や食堂、江ノ島電車の駅と陸橋…。そんなありふれた場での、4姉妹をめぐる日常の重ね合わせである。
まじめで責任感の強い長女(綾瀬はるか)、奔放な二女(長澤まさみ)ら姉妹と、頼りない実母(大竹しのぶ)、食堂店主(風吹ジュン)らのそれぞれの人生と互いの心の寄せ合い、口論がていねいに積み重なっていく。
ぼくがこれまで観た日本映画とかドラマでいえば、『細雪』(谷崎潤一郎原作、1948年)、『東京物語』(小津安二郎監督、1953年)、『あ・うん』(向田邦子原作、1980年) とおなじ部類に属する気がする。正統的な日本の家族の日常に流れていく、心の移ろいの物語である。
その一方で、原作が漫画だったことに驚いた。この監督の目のつけどころは独特だ。これまで観た『だれも知らない』(2004年8月)、『歩いても 歩いても』(2008年6月)、『そして父になる』(2013年9月)も設定はかなり違っている。だれど、人の気持ちの深いところにおりていって共感しようとする感じは共通しているように思う。
この人の映画、まだいろんな展開がありそうだ。次も楽しみだ。