変身する少女の芯の冷たさに魔力
(集英社文庫、初刊は1999年8月)
この文庫が16刷にもなっている理由は、読み始めて30分ほどでわかった。過不足ないディテールと心理描写がバランスよく配置され、それらがリズムを生み、ぐいぐいと引っ張られていく。
小説の核となる少年と少女の心の闇、刑事の生一本で真面目な姿勢…。たくさんの人物が交錯するけれど、ぼくは少女の「変身」にいちばん気をひかれた。彼女がずっと持っている「芯の冷たさ」には魅力が、いや、魔力がありすぎる。
こういうのを「悪漢小説」とか「犯罪小説」というのだろうか。