戦国の元気娘が蘇る 長髪なびかせ男衆率い
(新潮文庫、2013年10月)
単行本が何年か前の本屋大賞になった。本のカバーに、長髪をなびかせながら風に向かって立つ「娘」の後ろ姿と正面のイラストがあしらってあり、タイトルとあいまって実に印象的であった。文庫本になって読んでみた。
主人公の娘、村上景(きょう)は、瀬戸内海の海賊や毛利家の間では「嫁の貰い手のない醜女」とされている。1巻は、その生い立ちや海賊と毛利家との関係などが主だからか、文庫カバーのイラストは後ろ姿になっている。
2巻に出てくる泉州海賊の間では景は反対に「美人」とみられている。だからか、2巻のカバーは、正面から見たイラストになっている。切れ長の目に大きな口と薄い下唇…。いわゆるハーフの顔立ちだ。
このあたりの男たちの反応の違いとか、景の性格描写との関係はとっても刺激的だ。400年前の元気な娘が現代によみがえってきて、船の先頭に立って瀬戸内海の風に長髪をなびかせている―。どこまでが本当なのだろうか。
意外だったのは、大阪での本願寺をめぐる戦いのシーンが長いことだった。「海賊の娘」だから、海上戦が中心だと思っていた。特に2巻は大半が地上戦に終始する。しかも景は戦いには直接は参加しない。ここはぼくには少し長すぎた。早う娘を出してよ、と。
それに戦闘シーンにいまひとつリアリティがない。戦いの構図や流れがひんぱんに変わるので、ついていきにくい。3巻と4巻、どうしょうかなあ。