6 報道 新聞の先は

徳山喜雄『報道危機』

マスメディア敵視 強くなり機能不全に 

 (集英社新書、2003年6月)

 「敵視されるマスメディア」との指摘に同感だ。バンコク赴任前の1990年代後半も社会部でデスクをしていたが、バンコクから帰国して3年ぶりにデスクに戻ってみて、新聞メディアを見る目がこの間にさらに厳しくなったのを実感している。

 直感だけど、日本の市民がマスメディアを「味方」と感じなくなってきている。少なくても、そう感じる人が若者から中年にかけて増えている気がするのだ。

 9.11事件の後、アメリカのジャーナリズムが「愛米一辺倒」になってしまっている、との指摘も正しいと思う。

 この筆者が勤める朝日新聞社はもちろんのことだが、ぼくが所属する中日新聞社も意識の中では、報道やジャーナリズムの「メーンストリート」を歩んできたと自負している。しかしそうした伝統的メディアがいま衰退化し、機能不全に陥っているとの言説も身に染みる。

 マスメディアは本来やるべきことをやっているのか、報道被害の広がりや若者の新聞離れをどうするのか、個人情報保護法案への姿勢は市民の側に立っているのか…。筆者が提起する問題はいずれも鋭い。

 新聞記事に対する名誉棄損の訴えが増え、その賠償額が高騰しているというのも背中がぞくっとする話だ。

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