2 小説 物語に浸る

村上春樹『国境の南、太陽の西』

日常に潜む闇の深さ

(講談社、初刊は1992年10月)

 読み直しである。『海辺のカフカ』で久しぶりに村上春樹の面白さに触れ、その流れで、入れ替わりに本棚から取り出した。

 筆者の自伝的青春(性春)小説のようだ。10年ほど前に最初に読んだ後、ジャズバーを経営する都会的な主人公の話、というイメージしか残っていなかったのはなぜだろう。

 恥ずかしながら、このちょっとひねった題名の意味もよく覚えていなかった。今なら言える。日常に潜む、心の闇の深さ、だと。

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