明治初頭にあんな「武士」がいたろうか
(エドワード・ズウィック監督、日本公開2003年12月)
主演のトム・クルーズはさすがだ。アクションもやはりうまい。小雪の美しさも印象に残った。
渡辺謙のサムライ役がアカデミー賞助演男優賞にノミネートされたこともあり、日本でも公開後の人気はすごく高い。
今回の渡辺謙が大変身して名演技をしたというわけではない気がする。彼は彼らしく普通に演じていた。むしろ、もっと深みや意味深さや無言が前に出てもよかった気がする。
それよりも、明治初頭のあの時代に、あれほどの英語を操れるサムライが、しかもあんな田舎にいたかという疑問が強く湧き出てきて、違和感を抱かざるを得なかった。
なぜか、バンコク赴任前にDUOで英語を自習した時のフレーズのひとつを思い出す。
In most cases, modernization is identified with westernization.
(ほとんどの場合、近代化は西欧化と同一のものとみなされる)
映画は最後に明治天皇が、日本幕府の西欧化に乗じて富と権力を得ようとする大村大臣(原田真人)を退けるところで終わる。この映画を日本人でなくて、なぜ米国人が作るのだろうかと考え込んだ。
江戸から明治への歴史の流れや武士道、日米比較論など論点はほかにも多数ある。それらも含めていろいろと頭を巡らすことができたし、総合的には十分に楽しめた映画だった。