9 名古屋 地元を旅する

岩中祥史『名古屋学』

豊富な事例の6科目 圧巻の言語学 

 (新潮文庫、2000年4月)

 ほとんど知っていることの「集大成」である。しかし集めている具体例の数と幅の広さは半端ではない。しかもその組み合わせ、というかカリキュラムが面白い。「社会学」「歴史・地理学」「経済学」「経営学」「言語学」「栄養学」の6科目に分けているのだ。

 中でも言語学が面白い。事例も豊富だ。名古屋弁の表記も工夫が行き届いている。名古屋出身で明和高校から東大文学部に進んだという経歴を知って、さすがと思った。ぼくは京都・舞鶴の生まれ育ちで、名古屋弁は18歳からしか知らない。なるほどなるほど、とうなることばかりだ。

 経営学に名古屋の哲学として「浮かれない、騒がない、踊らされない」とあるのも妙に納得してしまった。

 全体として、少し極端な表現や決めつけが過ぎるかなと感じるところもあるけれど、こういう風に書かないと、地域文化論は成り立たないかもしれない。中日新聞や中日スポーツも、名古屋を学ぶ上で「必須のアイテム」として登場してくる。思わず苦笑しつつ、上手にまとめるものだなあと感心して読んだ。

 ぼくも名古屋に住んで33年になった。キャリア官僚や大手企業の転勤者から名古屋を見下すような冷淡な批評を聴くことがあると、東京エリートにえらそうなこと言われたくない、と心の中で反発するようになった。

 この本を読んでると、そうだそうだと相槌を打つことがたびたびあった。ぼくも「準」名古屋っ子になってきたのかなあ、と実感したのだった。

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