「天声人語」を批判 返り血覚悟の潔さ
(文春文庫、初刊は2002年8月)
とにかくあの朝日新聞「天声人語」をこてんぱんにやっつけた力の持ち主だ。冒頭の「ひきこもる『天声人語』の断末魔」と田中康夫論、教科書問題が面白い。
返り血を浴びる覚悟の潔さと、それを決断できる努力というか徹底した現場主義にはまいる。佐高信とか猪瀬に続く硬派の論者だ。
ここで批判されいてる天声人語の筆者が担当したのは、ぼくのバンコク時代のおわりごろから帰国後の社会部時代までだった。バンコクには、その日の朝刊実物が空輸され夕方に支局に届いた。ぼくは朝日の紙面ではいつも天声人語を真っ先に読んでいたが、帰国間際になって、あまりの中身のとぼしさに茫然とした記憶が鮮明だ。
社会部デスク時代に、この筆者の『ひきこもる『天声人語』の断末魔』が雑誌「諸君」に出て話題になった時、やっぱりなあと思うと同時に、その筆法の見事さに驚いた。過去の膨大な「人語」もしっかりと読み込んだうえで書いていることにも圧倒された。
「エースを出せ!」の一言は「-の断末魔」の最後の最後に、締め言葉として出てくる。朝日も、特にそのときの天声人語子と、かれを選んだ人たちは、くちびるをかんだに違いない。