「子宮の衝動」に衝撃 「作家の性」に脱帽
(新潮文庫、初刊は2001年)
衝撃である。脱帽である。
戦争がもたらす悲劇という言葉でくくるにはむごすぎる。筆者の個人的な体験に基づいているし、巻末の参考文献のすごさを知れば、ノンフィクションに近いのだろう。
主人公の女性には、ぼくには理解などできっこない「たくさましさ」と「子宮の衝動」みたいなものを感じる。そのパワーと存在感にぐいぐいと引っ張られていく。こちらが衝撃である。
自分の母をあのように書く。いや、書かずにいられない。いや、書かけてしまう。それが作家であり、プロの性(さが)なのだろう。こちらは、脱帽だ。
いずれ映画かドラマになるのだろう。観たいような、裏切られる確率が高そうだから観たくないような―。