矛先はメディアへ わかっちゃいるけど
(宝島社、2004年11月)
この人の刺激的な3部作を読み、いつも考え込んできた。そして4作目はついに矛先が、真正面からのマスコミ批判となった。ところどころに日本の新聞人としては乱暴に感じる表現もあるが、最終的に筆者が主張したいことは「その通り」だと思う。
サブタイトルは「なぜ真実が書けないのか」である。頭や感覚ではわかっていながらも、現実の新聞づくりでなかなか実現できない苦い思いも自覚する。日本社会の風土や歴史の流れ、日々の惰性、事なかれ主義、予定調和…。いろんな要素が保守的に組み合わさって生じているのだろう。
ラストの「私はこうしてジャーナリストになった」は、筆者が、単なる憶測や新聞情報だけで書いているのではなく、濃密な体験と深い洞察力から文章が生まれていることをぼくには感じさせる。
さて具体的にぼくは新聞づくりにおいて何から始めようか。企業や役所の発表に頼らず、独自の発想と視点に基づいてゼロから取材した記事や、発表や報道ずみの事実を組み立て直したり背景を再取材した記事を重視しよう。
そんな手法自体は目新しくはない。ぼくが記者になった時から先輩に言われ、ノンフィクション本から学び自分に言い聞かせてきたことだ。問題はその切り口と深みであり、何をだれのために書くかなのだろう。