8 街歩き 建築を味わう

旧加藤商会ビルとタイレストラン

丁寧な修復 べストの転用 本物の笑み 

  (名古屋市中区・納屋橋)

 旧加藤商会ビルは堀川の納屋橋のたもとに立っている。昭和6年に建てられ、外壁のレンガタイルなどに当時の建築様式が残っていて、国の登録有形文化財に指定されている。

<▲「爛熟は我に在り」に貼った中日新聞記事切り抜きとメモ>

 建物は小ぶりで、さほど凝った造りではない。けれども、名古屋の都心には当時の建物はほとんど残っていないため、堀川のたたずまいとともに歴史の香りをいまに伝えてくれる貴重な遺産だ。

<▲最新の加藤商会ビル/2020年10月>

 そこが改修され、中にタイ料理店「サイアムガーデン」がオープンした。加藤商会は東南アジアから米を輸入する商社であったし、建物内には一時はシャム(現在のタイ)の領事館もあったという。タイ料理店への転用は、その立地と歴史から考えて、考えつく限りベストの選択だったろう。

 建物の内部は外観から想像するより上質な空間だった。白壁、木製サッシ、シャンデリア、木の腰壁、レリーフなどがていねいに修復してある。1階が受付とキッチン、2階と3階が客席で、南西東の3面は窓になっている。

 食事ではコースをいただいた。トムヤム海鮮スープ、ソムタムのサラダ、そしてプー・パ・ポン・カリー。バンコクにいた3年間で何度も食べた定番のメニューである。味は本格的ではあるが、ぼくの記憶の中よりもソフィスティケートされ、量も少なめに感じた。

 料理を出してくれた青年はタイから日本にきて3年だとか。その笑顔が料理よりもタイらしかった。帰り際にキッチンの中にいたタイ人女性とも目が合うとやはり、あの笑みが帰ってきた。そこも、まさにタイだった。

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