4 評論 時代を考える

堀江貴文『100億稼ぐ仕事術』

手法とツールにみなぎる自信

 (ソフトバンクパブリッシング、2005年2月)

 いま話題の人物の本ということで、店頭で目に留まり、つい買った。パラパラと地下鉄の中で読むこと一週間。この間にニッポン放送株をめぐるフジテレビとの争いは連日、一面の記事になっていた。

 読んでいてちょっと不思議な気分になった。彼はまだ32歳。ネットビジネスに飛び込んで12年たっているとはいえ、自信の深さにあきれるのだ。

 その自信は哲学とか心構えとか蓄積を伴っているわけではない。自信を持っているのは表面的なビジネス手法であり、ツールに対してである。

 大人だけれど、肌はすべすべしていて、傷も髭も産毛もないという男の話を聞いている感じがする。そのツルっとした手ごたえのなさ、陰影のとぼしさは何を意味しているのだろう。デジタル社会の象徴なのだろうか。

 この人物と本のエッセンスは最後の252ページの短文にもあると思う。

  • 社名は単なる記号である
  • 世の本質は諸行無常である
  • 人間の存在意義などない

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