明快な平面 品の良さ 天性と育ち
(東京オペラシティ)
あのニューヨークでMOMAを訪れた際の興奮が蘇る。この手の建築系展覧会は、現地の建物を実際に観ているとしっかりと伝わってくる。
この人のプラン、形の明快さは格別だ。豊田市美術館も含めていずれもモダーンでありながら、日本的な端正さも漂わせている。建築材料の選択もきめ細かくて、しかも品がいい。
経歴書を読んでいて驚いたことがある。新和風とかモダニズムの建築家としてぼくも知っている谷口吉郎がお父さんだから、吉生氏もてっきり東大か東工大か早大の建築を卒業したと思いこんでいた。それがなんと大学は慶應大学の機械に進み、建築はその後のハーバード大で4年学んだという。
それから丹下事務所を経て独立した。建築家として名前が社会に広く知られるようになるのは平成に入ってからだ。このころぼくは新聞にどっぷりと浸かっており、経歴も含めてよく知らないはずだ。
天性と育ちと教育環境…。そのどれもが設計過程と作品に混在しているのだろう。世界に誇れる日本人のひとりである。