波乱万象と混沌 生きざまを昇華できたか
(マーティン・スコセッシ監督、日本公開2005年3月)
昨年のアカデミー賞で最多11部門にノミネートされた話題作。ディカプリオ演じる航空王・映画王のハワード・ヒューズは、この映画の通りならとても魅力のある人物だし、映画化に値する人物なのだろう。
ただ映画ファンとして批評家的な目線からみると不満が多く残った。
ヒューズはどうやって巨額の財産を築いたのだろう。米国人なら常識なのかもしれないが、映画だけではぼくはつかめなかった。
ディカプリオの演技は過剰すぎる気がする。その過剰さの割には、ヒューズの潔癖症や精神異常が経済的成功にどう関係していたのかも伝わらなかった。
航空機シーンも、墜落場面を除くとさほど迫力はなく、重要でもない。女性たちに総じて魅力がないのも残念だった。
ヒューズの波乱万象で混沌とした人生を昇華できたという感じが残らないのである。アカデミーの主要賞を逃したのもわかる気がする。