8 街歩き 建築を味わう

小樽を歩く

「海の玄関」の栄華 観光戦略で復活

 ( 北海道 )

 この街は北海道の海の玄関として栄えた。だから富の蓄積もバブルも観光開発も札幌より分厚い気がする。江戸時代の鰊(ニシン)漁から開拓期にかけての栄華をしのばせる施設が観光戦略の中で復活していた。

<▲パンフから>

 「にしん群来(くき)」という語句を久しぶりに思い出した。それも本場で。俳句の季語だと教えてもらったのは舞鶴での高校時代だったと思う。

 それがどんなにすごい量だったかは、鰊御殿で見た往時の写真で初めて知った。写真には陸に水揚げされた大量の鰊と、それを見つめる漁師たちが映っている。鰊が網元にもたらした巨万の富と、立ち込めていただろう魚臭さを、いまはまったく臭いがしない展示室で想像した。

 それにしてもなぜ、鰊は突然、この地にこなくなったのだろう。鰊御殿のパンフには「昭和30年ごろからみられなくなった」とあるだけで、理由は書いてなかった。どうやらいろんな説があるらしい。

■北一ホールがイチ押し 鰊倉庫がビアホールに 
<▲パンフから>

 小樽市街では北一硝子の存在に興味を持った。

 もとは漁船用のランプやブイの製造で財をなした会社だったが、漁業の衰退とともに一時は斜陽化した。しかし街の再開発や観光戦略の中でインテリアランプやクリスタルガラスなどを加えてブランド化に成功した。

 堺町本通に沿って「北一」と名がつく建物が何棟も並んでいた。ぼくは三号館の北一ホールがいちばん気に入った。かつては鰊をはじめ本土との交易の品の倉庫だったらしい。改修してビアホール風に変えた。

 ホール空間は高い天井と梁、木製棚から構成されているが、窓はない。167個の素朴なデザインのランプが客のテーブルに光を落としている。醸し出すムードはここでしか味わえない独特の世界を形成していて、水準は高い。

 小樽には、ブロック新聞三社連合の運動部長会が札幌の北海道新聞で開かれた際に足を延ばした。観光客としては札幌より小樽のほうが面白く、中でもこのホールが一番のお勧め空間だった。

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