7 催事 肌感で楽しむ

展覧会『建築の日本展』

遺伝子たどる旅 ニッポン賛美?

(東京・森美術館)

 「その遺伝子がもたらすもの」という副題がついている。ぼくが40年前、大学と大学院で近代建築史を学んでいたころの記憶と知識を掘り返していく時間だった。ぼく自身の遺伝子との対話でもあった。

(▲入場券)

 展覧会のタイトルは「日本の建築」ではない。「建築の日本」としたところに「今」がある。もちろん著名な建築家やその作品が、教科書のように登場してくるのだが、その切り口がテーマなのだ。図面や写真や模型の中に、「日本」の美意識や人生観がどう隠されているかを軸にして、近代建築史を整理し直している。

 企画者は森ビルで、監修は藤森照信氏だ。テーマ設定にどんな議論があったかわからないけど、ちょっと嫌味な見方だが、昨今の日本再発見、PRモードに乗りかかっているとぼくは感じる。特に安倍政権になってからの「日本、実はこんなにすごい」的な流れだ。

 そんな頭でっかちの論評は、ぼくの職業病であり、悪い癖なのだろう。展示そのものは十二分に知的なブラッシュアップになった。

 紹介されている建築にはみな、きちんとした模型がついているのもすごい。いちから作るのは大変なので、展示する建築は、その模型がすでにあることを前提に選んだのかもしれない。

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