8 街歩き 建築を味わう

国立新美術館+黒川紀章展

湾曲ガラス面とシンプル平面 話題が先行

 (東京・六本木、2007年1月開館)

 1月21日に開館したばかり。設計者の黒川紀章が4月の東京と知事選挙に出馬するとあって、何かと話題先行の建築である。

<▲パンフ表紙>

 この美術館は所蔵品を持たず、企画展や巡回展のみということで、プランは極めてシンプルだ。空間のわかりやすさも際立っている。

 ぼくの目にはやはり、中央アトリウムにある逆円錐形の内部コアと、その3階「屋上」にあるフランス料理店が強い印象に残る。正面の湾曲したガラス面と相まって、この建築の表情を独占しているといっていいだろう。

 湾曲するガラス面の内側に、人が通れる幅50cmくらいの通路が水平に7、8本走っているのが気になった。構造上必要か、維持管理用なのか。おそらくその両方を満たす目的のように見えるが、どうにも具合がよくない。デザインとしても武骨ではないか。ほかに手はなかったのかなあ。

▲パンフの平面図

 この美術館での「黒川紀章展」は予想以上に楽しめた。黒川が設計した建築群をまとめて観るのは、この展覧会が初めてだったから。

 黒川の建築界での評価は、その知名度ほど高くはない気がする。丹下健三に続く世代だが、磯崎新や原広司、安藤忠雄と比べるとやや特例扱いされているのではないか。政治への関与や発言、営業力、パフォーマンス力の方が前面に出ている感じが強く、それが疎ましく思われているのだろう。

 でもこの展覧会では黒川の建築設計の蓄積と歩みをじっくりと観た。話題先行の人という思い込みを吹き飛ばすだけの厚みと実力を感じた。

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