殺人犯と作家 どちらが冷血だったのか
(ベネット・ミラー監督、日本公開2006年9月)
トルーマン・カポーティが『冷血』を書くまでの6年間に迫る。シリアスな社会派ドラマである。
ぼくが『冷血』を読んだのはいつだったか、はっきりとは覚えていない。中身よりも、ノンフィクションの世界を切り開いた名作、という手法の観点からの関心が残っている。
沢木耕太郎がエッセイでその手法に触れていた。佐木隆三が『復讐するは我にあり』を書くときにベースにしたのも『冷血』と思われる。
この映画では、作家カポーティは、殺人犯に上手に近づき材料を得ながら、内容やタイトルではうそをつき”名作”を書き上げる。
しかしその後は作品を出せておらず、『冷血』を書き上げる仕事とその際のうそが、後でかれを苦しめたのだろうと想像させる。ノンフィクションを書くことのつらさが伝わる。
殺人犯と作家のどちらが冷血だったのか、がテーマか。