5 映画 銀幕に酔う

邦画『トウキョウソナタ』

大都会の非情 家族の日常 シニカルに

 (黒沢清監督、2008年9月公開、伏見ミリオン座)

 主演の香川照之がいい。大手会社の総務部長をリストラされたが、家族には言えずに職探しを続ける中で、妻や長男、次男にもいろいろことが起こる。

 妻の小泉今日子も、顔の表情、特に目の力がすごい。役所広司が演じる強盗と、車に乗って街を突っ切るシーンが印象に残る。

 長男は米国の海兵隊に入り、イラクへ送られる。次男はピアノの才能に恵まれ、音大付属中学校の実技試験で学校関係者までもその実力と才能にほれぼれするシーンで終わる。だから観終わった後の印象は明るい。

 しかし映画全体では、大都会の東京と、そこで暮らす普通の家族が置かれている現状については、きわめてシニカルな目でとらえている。

 家族4人が食卓を囲むシーンは、かつて観た名作『家族ゲーム』をほうふつとさせる。当然、映画スタッフはそれを強く意識していただろう。

 やはり日本映画は洋画よりいい。画面から伝わってくる情感の密度が違う。

名古屋・伏見のミリオン座で妻、二女と3人で観た。

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