5 映画 銀幕に酔う

邦画『舞妓はレディ』

ユーモア満載エンタメ 復習と成長の物語  

 (周防正行監督、公開2014年9月、MOVIX三好)

 周防監督の前の2作品は社会派のシリアスな内容だった。『それでもボクはやってない』では司法制度に、『終の信託』では尊厳死に迫った。その硬派ぶりにも、ぼくは拍手を送ってきた。

 最新作はどんな作品かと待ちきれず、公開初日に妻と観た。なんと祇園の舞妓に弟子入りして成長する娘と、それを見守る人たちの物語だった。『シコふんじゃった』や『Sall we ダンス?』 のエンタテイメント系に戻ったことになる。

 シコとダンスの次が舞妓で、娘さんは鹿児島弁と津軽弁のバイリンガルという設定に、エンタメ2作と共通するユーモアを感じる。動きを伴うマイナーな世界とそこに挑戦する素人、という筋立ても共通している。

 京都の大学の言語学者が、娘さんの舞妓入門を支え、なまり言葉を京都弁に変えていくところは、タイトルと同様に『マイフェア・レディ』のもじりなのだろう。楽しみながら作っているという感じが満載である。

 舞妓になるために、言葉はもちろん、踊り、振る舞い、作法など厳しいけいこに励むところや、先輩がしつける場面が出てくる。日本人が失いつつあるものの大事さを感じた。ある意味、学習と復習の大切さを説く映画でもある。

 ただ同じエンタメ系でも、前2作ほどの切れ味とか爽快感は感じなかった。この監督、次は何に挑んでくれるのだろう。

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