5 映画 銀幕に酔う

台湾・香港・米合作『ラストコーション』

抗日集団めぐる訳あり男女の濃密な逢い引き

(アン・リー監督、日本公開2008年2月、DVD)

 第二次大戦末期の上海が舞台である。それだけで匂い立ってくる濃密な時代感覚がある。

 加えて主人公は、占領する日本軍の手先として抗日グループを取り締まることで出世する中国エリートである。もうひとりは、彼の暗殺を目論むグループから「色仕掛け役」として送り込まれた若い美女、ときている。

 こういう組み合わせになれば、あとは息詰まるようなミステリー展開か、派手なアクションか、濃密なスパイ活動がくると思ってしまう。

 ところが女が男の気を引くのに成功し、逢引きが始まるやいなや、男女の情愛や屈折した欲情で画面はあふれかえり、その徹底描写と演技にひっくり返ってしまった。どうしてここまで? という疑問は、実はラストで氷解するのだが―。

 いやあ、まいりました。

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