5 映画 銀幕に酔う

邦画『歩いても 歩いても』

身につまされる場面の連続 ここでも阿部寛

 (是枝裕和監督、公開2008年6月、DVD) 

 

 15年前に亡くなった兄の命日に、弟(阿部寛)と姉(UOU)がそれぞれの家族を連れて、両親が暮らしている実家に帰省してきたという設定である。

 これだけで、いろんな人にいろんなことを考えさせるだろう。ぼくにはまさに身につまされるシーン、セリフの連続だった。

 映画を観ながら、阿部の立場に立ったり、父親役の原田芳雄の気持ちになったりした。すでに自分の両親はこの世にいないことの無念さを、ひと握りの安堵とともにかみしめることにもなった。

 タイトルはどうやら、挿入歌の『ブルーライト・ヨコハマ』の歌詞からとったらしい。本意はそのあとの『小舟のように』だろうか。

 それにしても、またしても阿部寛だ。『HERO』では検事、『チーム・バチスタの栄光』では変人検査官、NHK『天地人』では上杉謙信、そしてこの作品では絵画修復士である。次はどんな男を演じてくれるのだろう。是枝監督の次作とともに楽しみだ。

 家で妻とDVDで観た。いつもなら縫物とかアイロンとか何かほかのことをしながら観る妻が、めずらしく何もせずに見入っていた。

こんな文章も書いてます