3 随筆 個性に触れる

姜尚中『悩む力』

「徹底的に悩め」 認めてくれる安心感

 (集英社新書、2008年5月)

 帯には「75万部突破!」とある。とっつきやすいとは言えないこの本がどうしてこれだけ読まれているのだろうか、と考えながら読んだ。

 いくつかはすぐに思いつく。タイトルのうまさ、姜氏の理知的な顔、マックスウェーバーと松目漱石にまつわる引用でつないでいく手法などだ。

 姜氏はよくテレビに出ていて顔が知られているし、声も魅力的だ。在日韓国人二世で東大教授という肩書も大きな要素だろう。

 でもそれだけではないだろう。中身を突き詰めれば、全体が醸し出す「まじめさ」ではなかろうか。話がわき道に逸れても(それほど大きくは逸れないけれど)、あくまで真面目で律儀で正直である。

 悩んだら徹底的に悩めと、悩むことそのものを認めてくれていることへの安心感。そのあたりがベストセラーになっている最大の源泉だろう。

 とすれば、いまの日本社会の多くの人たちが、真正面から、自分の人生や生きる価値を考えている証左なのかもしれない。特にぼくよりも若い人たちが…。

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