5 映画 銀幕に酔う

米映画『グラン・トリノ』

モン族と人道主義 イーストウッドの選択

 (クリント・イーストウッド監督、公開2009年4月)

 何から何までイーストウットが手掛けた一作。彼らしいヒューマニズム、戦争観、宗教観がにじみ出た名作だと思う。

 ぼくの印象にいちばん残る設定は、イーストウッドが演じる意固地な老人の隣に、「モン族」の少年や姉が住んでいることだ。

 モン族はラオスとタイと中国の国境山岳地帯に住んでいた。ベトナム戦争の時に米軍に協力し、北ベトナムへのルートづくりや反ベトコン活動をした。北が勝利した後、モン族の多くは北米へ移住(形は亡命)したといわれる。映画の中でも、米国で生まれ育った姉が”米語”で老人に説明する。

 もうひとつのカギは朝鮮戦争だ。ベトナム戦争より30年ほど前の北朝鮮、中国との戦い。この戦争で老人は未抵抗の敵兵士を殺してしまい、そのことへの原罪意識を胸深く抱え込んできた。

 老人が懺悔の形として選んだのは、教会の牧師の前ではなかった。やっと心のつながりができたモン族の少年とその姉への恩返しとして、モン族チンピラへの「丸腰の復讐」を選択する。この結末について、あるいはぼくの人生の仕舞い方について、だれかと語り合い、考え直したくなった。

 このラストはまた、かつてマカロニウェスタンで観たガンマン、若きイーストウッドそのものだった。うまい、お見事!

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