文字は読めないけれど 難読症の愛の形
(スティーブン・タルドリー監督、公開2009年6月、DVD)
最初は濃厚なラブシーンにはらはらした。次第に主人公の「難読症」と思われる秘密が顔を出し始め、核心へと引き込まれていった。
「難読症」という用語と症状は、この映画を観る直前に内田樹の著作『日本辺境論』を読んでいて初めて知った。終わりの方で日本語の特殊性を説明する際、この映画を紹介するとともに「欧米人に多い」と触れている。
学習機会がなかった「文盲」と違い、先天性である。普通に話はできるし、社会生活も送ることができるけれど、文字は読めないし、書けない。
しかし映画では、この主人公については「文盲」と出てくるだけ。しかも主人公の女性は刑務所の中で文字を勉強し、刑期を終えるころにはある程度、文字を書けるようになる。
難読症であっても後天的に読み書きができるようになるケースはあるだろうか。ただ、どちらであっても、この映画のテーマである「愛を読む」は損なわれない。
この映画の原作『the reader』は読めていない。しかし妻も娘たちも読んだうえで映画もすごい、と言っていたので、先に映画をDVDで観た。
2009年キネ旬ランキングでは外国映画の6位。ほぼ同時に見た『チェンジリング』は3位。その前に見た『グラン・トリノ』は1位だった。イーストウッドの正義感と鑑賞後のすっきり感が決め手だったのだろうか。