都心の賑わい 車の利便 両立へ画期的提言
(ダイヤモンド社、2010年9月)
筆者とは6月ごろ個人的な縁でゴルフ場で知り合った。その後、名古屋市の外郭団体が主催する勉強会でも一緒になり、できたてほやほやのこの本をいただいて、筆者の専門領域の一端に触れる機会になった。
知的好奇心を刺激されながら読んだ。理由はいつくもある。
第1に、テーマになっている「都心の賑わいの消失はクルマに原因がある」との認識は、ぼくも問題意識としてずっと持っていたからだ。
第2は、提案されている駐車デポジットシステムに実現可能性を感じること。クルマの便利さと同居できるアイデアとして優れている。
第3はタイトルの力にある。「都心の道路は有料に」とか「都心の賑わい クルマの自由」もありえたろうが、この反語には魅力を感じる。「だれのものか」の答えは「クルマのものではない」か「みんなのもの」になる。解決策を持っているところが核心だ。帯の「街をクルマから取り戻す」がはまっている。
文中にもへえーっと思ったり、うなずける指摘や表現がいくつもあった。
「クラウド・コンピューティング」
「現代の”暴れ馬”ともいわれる自動車」
「自由さが最大の魅力であった車は、その呪縛から逃れて、ある程度の不自由さを受け入れ、それが社会全体の幸福につながるシステムを構築していかねばならない」
広小路ルネサンスの精神とここでつながるとわかった。あの試み、やっておけば面白かったのに…。残念である。
いずれにしても駐車デポジットシステムは実現性があると思う。実現までの期間は、仮に社会システムが整い、事務方がその気になっても、首長がだれになるかによっても変わってくるのだろう。