6 報道 新聞の先は

内田樹『街場のメディア論』

マス凋落は「知の低下」 自粛なきミドルに期待

 (光文社新書、2010年8月)

 ことし初めに読んだ『日本辺境論』も刺激に満ちていた。そしてこの本も同じくらい挑戦的な論評が並んでいる。

 メディア志望の学生向けの講義がもとになっている。とげとげしい表現もあるけれど、ぼくにも説得力があり、賛同できる部分は多い。

 何といっても新聞・テレビ凋落の原因をこう断言しているのがすごい。
 「ネットなんかではなく、メディア自身の知の低下が最大の原因だ」
 その「知の低下」をもたらしているものは次のようなことだ。

  • 定型化してしまった表現
  • 生の個を出さず、だれでもいえる「世論」にしがみつく姿勢
  • 教育も医療も官も「変化」しなきゃいけないとの思い込み
  • メディアは世論をつくることがビジネスとの思い込み

 こんな指摘、だれも真正面から書かなかった。ぼくはいま編集現場を離れているので、かなり距離を置いて記事を読めているから、その通りだと同意できる。先週読んだテリー伊藤の落合賛歌『なぜ日本人は落合博満が嫌いか』とも似ている。

 冒頭の「キャリアは他人のためのもの」からぐさりときた。メディア志望の学生に対して「自分探し」を徹底的に否定し、与えられた条件の下で自分自身の潜在能力を選択的に開花させよ、と説くのだ。

 最後の「これからはミドルメディアの時代」も面白い。ミドルはマスとパーソナルの中間。数千人から数十万人の特定層に向けて発信される情報だ。筆者のブログがそのサイズだそうだ。ミドルはマスのように「すり合わせ」や「自粛」をしないから期待できるのだという。

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