裃はスーツ 算盤はPC 武士はサラリーマン
(森田芳光監督、2010年12月、DVD)
加賀藩の「そろばん侍」が主人公。刀ではなく算盤と書で給料をもらっているサムライ。5-10年前までならこんな時代劇ができることはなかったろう。
社会の収入格差が大きくなって、国家の財政危機が認識されてきた。先行き不透明な中での節約志向が背景にある。なんて理屈っぽすぎるか。
あの森田芳光監督が生真面目に時代劇を撮っているのがなんかおかしい。いろんな場面の中で、息子の元服の費用がまかなえなくなった時の「絵に描いた鯛」のシーンが白眉だった。堺雅人の軽妙で知的な演技が光っている。
それにしても、裃の武士たちが一心不乱に算盤をはじくシーンは、ぼくには衝撃的な映像だ。裃を紺のスーツ、算盤をパソコンに変えれば、現代のオフィスそのものになる。サラリーマンは今も昔も同じ、という監督のメッセージなのかもしれない。