5 映画 銀幕に酔う

邦画『十三人の刺客』

周到な仕掛け戦に見応え 最後は素手もいい

 (三宅崇史監督、公開2010年9月)

 1963年作品のリメイクだそうだ。そちらは観ていないので初見である。

 この作品の山場である13人と200人の宿場町での戦闘は、想像以上に見応えがあった。刺客たちは宿場町をまるごと借り上げ、周到な仕掛けを施して明石藩士を苦しめ、人数的に不利な戦いを接戦に持ち込んでいく。

 ぼくは頭の中で黒澤明『七人の侍』を思い出しながら観ていた。当然、制作スタッフも同じ思いで作ったのではなかろうか。

 最後は、周到な仕掛けとは正反対、素手の戦いになるところは一見、尻切れに見えるが、男の戦いなら本来はこうでなきゃというメッセージともいえる。

 稲垣吾郎の冷酷なサディスト藩主、伊勢谷友介の粗野な山育ち男、岸部一徳の低俗なホモ旦那…。彼らの存在感も光っている。

 冒頭と途中の切腹シーンがつらい。この切腹は武士の生きざまの象徴として描かれ、後半の戦闘を意味づけるのに不可欠とはわかるが、切腹場面だけは何回見ても理不尽で生理的に慣れない。ぼくは武士にはなれなかっただろう。

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