敵は元同僚 ボス殉死 驚き展開もOK
(サム・メンデス監督、公開2012年12月、MOVIX三好)
これで23作目だそうだ。ずっと見続けてきたシリーズだから、渋いところで驚く。
まずは、ボンドが年老いてきたという設定だ(といっても40歳前後か)。ダニエル・グレイグの動きはしっかりしていて、衰えはみえなかったけれど。
次の驚きは今回の悪役、敵の中心人物を元MI-5のスパイにしたことだ。個人的なことだが、いま仕事で関係している会社の幹部によく似ている。もしかしたら主人公はこっちかと思わせるところも。
3番目はボスが退任を迫られ、最後は殉死すること。この役はずっと女性で、表面は官僚的で冷淡だが本当はボンドが好き。特にジュディ・デンチはおおらかでゆったりとした性格を思わせるところがよかった。スパイ組織トップにこんな女性がいるかよ、という素朴な疑問もあったけれど、そこは娯楽映画だから…。
そんな驚きはともかく、今回も十分に007の世界を楽しめた。
■格闘シーンの後の仕草 袖先点検のさりげなさ
それにしても、ダニエルの白いシャツとスーツ姿は格好がいい。さらに、ど派手な格闘の末に敵をやっつけて次の動きに移るときのルーティンにもしびれる。息も切らさずに、まずは両袖の先のシャツとカフスに乱れはないかを指先でチェックするのだ。なんという粋、洒落たさりげなさだろう。
こんな自然な仕草こそが英国紳士、007ボンドの証といいたげである。英国という国と、シリーズ23作に対する製作者たちの誇りをぼくが感じる瞬間でもある。