介護と格差 友情と笑いで問題吹き飛ばす
(エリック・トレダノ、オリヴィエ・ナカシュ監督、2012年9月、DVD)
少し前に観た米映画『最高の人生の見つけ方』(2007年)のフランス版の感じだ。パリの中心部に住む富豪の障害者とその介護人の友情物語である。
富豪はパラグライダーの事故で頸髄損傷を負い車いすの生活。頭以外は、手も足も動かせない。性格にも気難しいところがある。
介護人はアフリカ系。複雑な家で育ち、定職はない。しかしウイットとユーモアと優しさを失わず、楽天的で、頭の回転もいい。
この映画には次のふたつがテーマとして隠れている。
- 介護現場の現実=下の世話から夜中の呼び出しまで面倒をみる24時間介護の大変さ。介護される側は介護人から「同情目線」を感じると嫌な気分になる
- フランスにおける格差=特にアフリカ系移民の若者たちは将来がないと感じている
このふたつの問題を主人公のふたりは笑いや友情でかき消していく。おそらくフランス人にしかわからない社会、政治への皮肉も散りばめながら。
DVDを一緒に観た二女が「観終わってから、こんなにほんわかできる映画って、そうないよね」。際どい下ネタも多用しながら、観客にそういわしめるところは、フランス文化の深さとこの映画の魅力だろう。「予想外の大ヒット」という新聞記事が納得できた。