5 映画 銀幕に酔う

米映画『リンカーン』

内戦・二枚舌・夜回り 竜馬と同時代の大統領 

 (スピルバーグ監督、公開2013年4月、DVD)

 恥ずかしい話だが、この映画を観ながら最初に何に驚いたかって、リンカーン大統領が南北戦争終結と奴隷制度廃止を実現した年である。1865年4月のことだった。暗殺されたのもその月である。

 なんと、日本では江戸末期、幕末である。あの竜馬や新選組が京の街中を走り回っていたころだ。そうか、リンカーンと竜馬と西郷は同時代だったのか、と。

 もうひとつ気づいたのは、ぼくがリンカーンのことを断片的にしか知らなかったことだ。ぼくが思い浮かべるのは、有名な演説の一部「市民による、市民のための…」、奴隷解放、ひげ面、の3つくらいだった。

 その南北戦争は、民主主義と自由を掲げる北部(ワシントン+NY)と、奴隷制度や大農園制を守ろうとする南部が対立した内戦とされる。リンカーンは北部に支えられている大統領だった。

 そうした構図の中で、リンカーンは理想主義で引っ張ったリーダーと思いきや、目的を実現するため、かなり強引な票集め工作をしている。二枚舌も使っている。寡黙なままでいるかと思えば、時には机を叩いて持論をぶつ。時には説得のための夜回りもやる―。家族の悩みも抱えながら。

 面白かった。勉強になった。さすがスピルバーグである。

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