8 街歩き 建築を味わう

尾張一宮駅前『 i ビル』

真ん中に広場 横に図書館 オープンな贅沢

(2012年11月開業)

 JRと名鉄の一宮駅にできた7階建て新ビル。商業店舗をごくわずかにし、オフィスやホテルも入れず、ほとんどを公共施設が占めているのが特色。山下設計が設計し、愛知まちなみ賞などを受賞している。

( ▲ 一宮駅 i ビルHPより )

 なんといっても、3階中央に設けられた「シビックテラス」がすばらしい。3-5階フロアのそれぞれ3分の1が3層分の半外部吹き抜けになっていて、駅前側には2本の柱しかない。3階床にウッドデッキを敷き、木製の丸テーブルと椅子が8セット置いてあって市民は自由に使える。

 中央のエスカレーターでテラスに着くと、駅前道路や市街地が目に飛び込んできた。駅ビルの真ん中のいちばんいい場所に、こんな贅沢な市民向けオープンスペースがありうるのかと驚いた。ひと休みしてもいいし、待ち合わせてもいい。イベントにも最高の場所になる。

 導入施設のメーンは、5階から上を占める市立図書館と、最上階にある300人のパーティーができる多目的ホール。ほかにも子育てや市民活動を支援するセンターとか、貸し会議室、福祉協議会など公共的な用途ばかりだ。特に図書館は、全国でもまれな好立地にあり、多くの市民に喜ばれているだろう。

 飲食や物販の商業施設はわずかしかない。鉄道会社がつくる駅ビルなら定番のホテルやオフィスもない。市所有のビルなので、既存の類似施設に営業面での悪影響を及ぼすことも配慮した構成なのだろう。基本構想での行政側の決断が魅力的なシビックテラス創出につながっているとみた。

 外観デザインも特徴的だ。白いアルミ折版のタテ格子状のあしらいが、近代的センスと和の香りを生んでいる。正面から見ると、タテ折版の幅は内部用途にあわせて変えてあり、それがリズムと変化も生んでいる。

 このファサードを実際に近くから見ると、写真よりも荒っぽく、かつ安っぽくも見えた。しかし全体して、この白い縦格子と、外に開かれた真ん中のシビックテラスの組み合わせは強いアイデンティティを持っていて、市民に「わたしたちの駅」という愛着と記憶をもたらし続けることになるだろう。

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