仏と印の奇跡的融合 ”隠し味”にハリウッド
(ラッセ・パルストレム監督、公開2014年11月、MOVIX三好)
料理の映画と聞くと、食欲をそそられる。レストラン選びと違って失敗することは少ない。この作品も例外ではなかった。
マロリー夫人は田舎町にあるフランス料理店の経営者だ。「魔法のスパイス」の持ち主は、その向かいに突如できたインド料理店の二男である。フランスとインド。ぼくの食経験では、うなぎと梅干しくらい食い合わせが悪い。
案の定、両極の料理店は摩擦を生み、最初は対立しあう。しかし「魔法のスパイス」は国境や料理の壁を越え、和解と尊敬と協調を生む。そこにマロリー店の女性シェフとの「恋」もまぶされていく。面白くないわけがない。
フランス料理で避けて通れないのがミシュランの格付け。マロリー店はひとつ星。インド料理店二男の舌はその店と、招かれたパリの店をふたつ星に導く。次は三ツ星となった時、二男は女性シェフとマロリーの店で取ることを宣言して終わる。極上のデザートのようなハッピーエンドだった。
インドのスパイスは奥が深いのだろう。その前提がこの映画を支えている。それも含めた料理へのこだわりが、作品に奥行きをもたらしている。
製作はスピルバーグ、配給はディズニー、言語は英語。作品をおいしくする”スパイス”にはハリウッドも隠し味で入っているらしい。
前週の夕刊で読んだ映画評に魅かれ、妻と劇場で観た。