日経幹部の堕落 たっぷりこってり
(講談社、2004年10月)
日経の鶴田社長が退陣するまでのノンフィクションスタイル小説。鶴田元社長が筆者と出版社を名誉棄損で提訴して記事にもなったから読んだ。
リクルート事件から始まる日経幹部の堕落ぶりがたっぷりと書かれている。「クオリティペーパー」の記者たちの正義感も。新聞業界に身を置くひとりとしては、へえーそうなんだ、このあたりは実際は少し違うんじゃないの、などと思いながら面白く読むことはできた。
ただ途中から、この筆致はすこし荒っぽくないだろうかと気になってきた。登場人物を擁護する気はまったくないが、肝心の鶴田社長の人物像に陰影が乏しすぎる気がする。記者たちも個性派ぞろいのはずなのに、その仕事や生活ぶりがパターン化されすぎているのではないか。
ストーリーの流れが会話中心に組み立てられていて、会食の場面も多い。それは仕方がないにしても、銀座や赤坂の一流料亭とかバーのオンパレードのところでは、こんな場面ばかり、ええかげんにしくれないかなという気分になった。
朝日の名物記者もばっさりとやられていたりして、ぼくを含む業界人にとってはそこそこ面白いのだろう。それでもこのテーマに、上下巻を使ってこれだけの分量を書く必要があるのか、と首をかしげた。