始末悪い輩と格闘 「一流」の裏側
(集英社文庫、初刊は2011年9月)
一流ホテルにもさまざまな悪(ワル)がくる。いや、一流ほど始末の悪い輩がやってくるというべきか。この作品のテーマはそこにあると読んだ。
この作家は、ある業界を舞台に設定すると、その裏側まで調べつくしたうえで、それを調理しながらストーリーの中に散りばめていく手法も得意らしい。以前に読んだ『白銀ジャック』のスキー場についてもそう感じた。
今回の舞台であるホテルでは、東野流の凝りに凝った筋立ての中で、客との様々なトラブルがいろいろと出てくる。そのトラブルのあれこれと、なんとか解決しようとする姿がホテル営業の神髄なのだろう。
この人気作家のもうひとつの面白さは、加賀恭一郎シリーズもそうだが、本筋とは無縁の人物の人生もそれなりにきちんと描かれて完結していることだ。それが小説を骨太にし、豊かなものにしている。
ただこの作品ではそれが成功しているとはいえまい。ぼくの読み方が浅いのだろうか。年を重ねて目が肥え、見る目が成熟してきたのだろうか。