5 映画 銀幕に酔う

邦画『遥かなる山の呼び声』

『シェーン』のオマージュ 見事な置き換え

 (山田洋次監督、公開1980年3月、テレビ放映)

 高倉健の死去に伴うテレビの追悼放映のひとつ。ぼくが観た追悼版はこれで『駅 STATION』『居酒屋兆治』に続いて3作目となった。いずれも過去に1度や2度は観ている。

 この作品は、山田監督が米西部劇『シェーン』(1953)から受けた感銘をもとに、日本版の脚本も書いて撮っている。ぼくは『シェーン』を学生時代に観た。馬で立ち去っていく主人公の背に向かい少年が「シェーン、カムバック! 」と叫ぶ有名なラストシーンをはっきりと覚えている。男の矜持と少年の純情-。

 今回観直した『遥かなる―』は、オマージュ作品としてもすばらしい完成度だと思った。もとの骨格を残しつつ山田監督らしい筋立てになっている。

 主人公は流れ者のガンマンから、高倉健にふさわしく「殺人を犯した、訳ありの男」に。からんでくるチンピラも、根はいい男たちに変えてある。銃での決闘は、草競馬に切り替わっている。

 極めつけはやはりラストだろう。少年の叫び声は、倍賞千恵子が手錠の健さんに渡す黄色いハンカチに置き換えられている。

 やっぱりそうこなくっちゃ、という納得感があった。『幸せの黄色いハンカチ』(1977年)をみな知ってることが前提ではある。配役の顔ぶれといい、寅さんの世界を観ているようでもあり、山田監督の映画ってやっぱりいいなあ、と幸せになれた。

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