2 小説 物語に浸る

高田郁『みをつくし料理帖1 八朔の雪』

主役は料理と一本気の少女 巻末にレシピ

 (ハルキ文庫、2009年5月)

 いやはや、とんでもない金脈をまた見つけてしまった。本山の旧松坂屋ストア1階の書店で「このミステリーがすごい」の昨年度番付を立ち読みしていたら、時代小説の1位がこの本だった。ふと隣の棚を見たら本物が目に入った。

 6年も前に世に出ていて、なんとすでに42刷を重ねている。本当にいいものは、時間がかかってもきちんと評価されていくのだとうれしくなる。

 時代は江戸、料理屋と裏長屋が舞台である。47巻を読んだ『居眠り磐音』シリーズのスタート、磐音が江戸で浪人暮らしを始めた初期も舞台は裏長屋だった。しかし本作では、剣も武士も主役ではない。料理の才と一本気、負けん気に恵まれた少女、澪(みを)の奮闘記だ。

 大阪育ちで、両親を水害で亡くした。老舗料理店に住み込んで板前修業を始めるが店は倒産したため主人の奥さんと江戸へ。つる家という蕎麦屋で働き天才ぶりを発揮し始めてから、いろいろと起きる…。

 幼友達が吉原の大夫になっているところは、磐音の許嫁だった奈緒の筋立てとだぶる。家は貧しいが、器量も頭も根性もある娘が「出世」できる道は限られていて、その象徴が「吉原の大夫」だったのだろう。

 つる家主人の種市。ときどきやってくる訳ありっぽい小松原。かれらが澪を盛りたてていく様は、人の世ってこうでなくっちゃ、と思わせてくれる。

 最後にレシピがついているのにもしびれる。澪が作り出す江戸料理を自宅の台所でも再現できるようにととうことだろう。料理ファンには、読んだ後に、作る楽しみと食べる快楽まで待っているのだ。すごい。

 続編の2-5巻をブックオフで買った。お楽しみは、これからだ。

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