4 評論 時代を考える

中村政則『戦後史』

絡みつく現代史 解きほぐす4分類

 (岩波新書、2005年7月)

 朝日新聞の特集「新入社・社会人に読んでほしい戦後」に触発されて三洋堂へ行き、たまたま目にしたのがこの岩波新書だった。

 戦後60年にあわせて書かれ、これまでに18刷を重ねていることから選んだ。

 以下は忘備録のためのメモ。とっきやすい「4分類」を拾った。

■「戦後」の区分
  1. 成立    1945~1960 敗戦から安保闘争まで
  2. 枠組み定着 1960~1973 高度成長と日中国交回復
  3. ゆらぎ   1973~1990 オイルショック・バブル・平成へ
  4. 終焉    1990~2000 冷戦終了・バブル崩壊・サリン・新国家主義
■四つの岐路
  1. 1950年代のサンフランシスコ講和と日米安保の条約締結
  2. 高度成長とベトナム戦争
  3. オイルショックと沖縄返還、日中国交回復
  4. 冷戦崩壊
■1980年代からの四つの第二次大戦観
  1. 中国に対しては侵略戦争
  2. 東南アジア諸国に対しては謝罪
  3. 英米仏蘭に対しては、帝国主義間戦争で日本だけが悪いのではない
  4. 1945年8月のソ連軍満州侵攻は日ソ中立条約違反の侵略

 読みながら、上のようなわかりやすい分類が実は容易でないことも思った。実際の歴史は多くの事柄がからみついて動いている。ぼくの知識や理解があちこちで刃こぼれしていることも知った。それらを繕うことができたかどうかは定かではない。これからの反復しだいだろう。

 半藤一利氏の『昭和史 1926-1945』(2004年2月)は、ディテールを積み上げながらやさしく包括的に語り上げていくスタイルが秀逸かつ新鮮でベストセラーになった。中村氏はこの新書のあとがきで、2004年11月から執筆を開始したと記している。半藤氏の「戦前編」に刺激され、おおいに意識しながら『戦後史』を書いたのでは、というのがぼくの勝手な素人解釈である。

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