5 映画 銀幕に酔う

邦画『殿、利息でござる』

剣でも内紛でもなく 実話もとにカネ物語 

 (中村義洋、2016年5月)

 封切日に劇場で妻と観た。いろんな話題が満載の最新作。期待も大きかったが、それを裏切らない面白さと満足度だった。

 まず設定が意表を衝いている。時代劇なのに、剣でも内紛でもなく、カネがテーマだ。東北の宿場町、吉岡宿の住民が物資輸送費をカバーするため、協力して大金を作り、それを藩に貸しつけて利息を取ろうというのだ。

 笑いがある。カネのことだから、個人のエゴもさらけ出される。最後は、守銭奴と思われてきた、大店の先代主人(故人)の「地元民への想い」が、町をまとめて事態を動かすところもいい。

 ヤマ場に登場した仙台藩主。演じているのがなんとスケーターの羽生結弦とわかった場面では、映画館の中でも歓声が沸いていた。

 この映画、実話に基づいている点が最大のミソだろう。原作は歴史学者の磯田道史氏。映画『武士の家計簿』(2010年)を観た人から「吉岡宿にもこんな話が」との情報がもたらされ、磯田氏が東大図書館の古文書をあたったところ当時のメモを見つけた。それをもとに評伝を書き『無私の日本人』に収めたことが今回の映画化につながったー。こんなサイドストーリーもうれしい。

 タイトルもある意味で秀逸だ。この映画のテーマは、自分の財産は戻らなくてもいいから町のために役立ててほしい、という願いの切実さにある。「利息」は大きな要素でなく前面には出ていなかったと思う。

 ところが現代日本はいま、経験したことがないマイナス金利だ。『武士の家計簿』は「武士」と「家計簿」という本来ならありえない組み合わせで成功した。平成が「経済の時代」なのも意識し、こちらもハレーションが生じそうな「殿」と「金利」を掛け合わせたのではないだろうか。

 その「殿」にぜひという羽生結弦への出演依頼も含めて、東日本大震災や地方再生のきっかけにしたいという思いと戦略も見えてくる映画でもあった。

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