8 街歩き 建築を味わう

星のや東京

「らしさ」の逆張り 徹底したエッジ

 (東京・大手町)

 かねて気になっていた最新ホテルに金曜日の夜、妻とプライベートで宿泊した。あの星野リゾートが、大手町のビジネス街の真ん中でホテルをゼロから作ったら、どんなものができるのか興味津々だった。

(▲正面玄関)

 外観からは通常の「ホテルらしさ」はどこにも感じない。車寄せも立派な玄関も大きな看板もない。外壁はアルミの文様格子で覆われ、客室の窓部分も例外ではない。既存の高級ホテルの常識からはすべて逆張りにみえる。

 玄関に入るとタタキがあり、靴を脱いで上がる。道路側に沿って網代模様の靴箱が作りつけられていて、靴は下3段のどこかに入れてくれる。

 ホテル内の床はすべて畳だ。ロビーだけでなく、エレペーターの床も廊下も客室内も。客はスリッパもはかずに、靴下か裸足のまま移動する。

(▲ラウンジ)

 ロビーのインテリアも、木の格子棚や障子、和紙を張った壁といったアイテムで統一してジャパニーズモダンの味つけになっている。

 ぼくらが泊まった部屋は約50㎡とゆったりした広さがあった。内装にはここでも網代が使われ、床置きの背もたれは竹だった。水回りは透明ガラスで囲われているがボタンひとつでスモーク状になり、視界を遮ることができた。

(▲浴室から)

 案内の女性スタッフが「星のやの部屋にはテレビはないのですが、ここは別です」とリモコンをオンにすると、画面が鏡に浮かび上がってきた。冷蔵庫はなかった。窓ガラスの外にはアルミ文様の外壁が見える。もっとも周辺はみなオフィスなので、客室からの眺めはもともと期待できない。

 共同浴場は「温泉がある大手町のホテル」として売りのひとつ。楽しみにして入った。露天風呂は筒のように四方の壁が空に向かっていて上が開けている。水平方向は壁しか見えなかった。

 夕食は館内地下レストランではなく近くのタイ料理店でとった。朝食は各フロアごとにあるラウンジに用意してあり、普通のおにぎり2個と味噌汁とおしんこという極めてシンプルなメニューだった。

 支払いはふたりあわせて12万6000円だった。あの立地で星のやブランド、温泉つき、広い部屋…。その価格は了解済みで予約したものの、ぼくの感覚からすると高いなあと思いながら、上がり框で靴を履いた。

 東京の最先端ホテルではこれほどエッジを効かせて特色を出さないと勝負にはならないのだろうか。ぼくには経験や見る目がないのかもしれない。それでも、いったいどんな人が泊まるのだろう、この価格でリピーターはいるのだろうかと、とても心配になった。

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