やはり伝記は青春時代がいちばん面白い
(アンヌ・フォンテーヌ監督、日本公開2009年)
原題は「Coco avant Chanel」。カギは「avant」にある。ココという女性が、シャネルという仏ファッション界でビッグネームになる前の半生を描いている。ヒーロー、ヒロインの物語はたいてい、青春時代がいちばん面白い、ということをあらためて実感した。
舞台は1800年代後半のパリ。日本なら明治の後半か。孤児院で育ったココは、キャバレーの歌い手や針子を経験しながら、ふたりの富豪に気に入られ、ファッションデザインに自分の才能と居場所を見出すまでの物語だ。
当時の女性のファッションをカメラがアップでとらえ、主人公の目にかぶせていく。その積み重ねが彼女のセンスやデザインの源泉になっていく過程がわかりやすく伝わってくる。旅先の海辺で見た漁師の横縞シャツが、次のシーンでは、それをモチーフにしたシャツを主人公が着ていたりもする。
主人公を支援する富豪は友人同士でもある。主人公はふたりの男性を行ったり来たりする。この感覚はぼくには不思議だが、フランスでは当時でもめずらしくなかったのかなあ。そういえば、日本でも谷崎潤一郎にはそんな女性がいて小説にも書いていた気がする。
愛知県がんセンターに入院中、ライブラリーでこのDVDを見つけて借り、病室で妻と観た。